【出演】
古宮修治(チェンバロ奏者、ヴァージナルとクラヴィコード独奏)
【※16〜18世紀の衣装で演奏予定】
【曲目】
|
|
【プロフィール】
■古宮修治 Shuji Furumiya
県立大宮光陵高校音楽科ピアノ科を経て、桐朋学園大学音楽部演奏学科チェンバロ専攻卒。チェンバロを故・鍋島元子、鈴木雅明、故・小島芳子、渡邊順生、有田千代子、家喜美子の各氏に師事。 さらにヤン・ヴィレム・ヤンセン氏にチェンバロ、オランダのフォルテピアノの重鎮であるスタンリー・ホッホランド氏にフォルテピアノ奏法の指導を受ける。また、18世紀英国式パイプオルガンやチェンバロのいくつかのコンサートや桐朋学園付属中高校においてのチェンバロレクチャーコンサート、恩師・鍋島元子没後10周年追悼リサイタルを恩師遺愛のチェンバロで行う。
2008年3月より、川口市内にチェンバロ教室と18世紀のフォルテピアノ、クラヴィコード、19世紀のアンティ-クピアノ4台(エラール、プレイエル、ショパン時代のプレイエル、ブロードウッド製)を揃えた教室を開設。
西洋の古楽器は歴史的な演奏慣習や奏法の実践にとどまらず、同時代に興隆した凡ゆる絵画、文芸、文化、さらには戦争、気象、経済、医療等の歴史的事象、楽器の発達史の推移のなか、そこに生きた当時の人間の価値観や美意識がどのように音楽に影響を及ぼしたかを探り、演奏へのアプローチにも生かす大切さを信条とする。さらに日本の中世以降の芸術に見出される多くの共通点をヒントにチェンバロやクラヴィコードの奏法に新しい手がかりと切り口を模索中。
それらを実現すべく、2016年からは計11台の歴史的鍵盤楽器を使用してピアノやチェンバロ、クラヴィコード等、作曲家の生きた時代と国に合致した楽器でのレッスンを展開中。
◎出演者に聞いてみた!古宮修治さんの「ト」「リ」「セ」「ツ」
Q1.古楽とはいつ頃の音楽でしょうか、またその魅力は?
A1.日本では奈良から江戸時代後半以前の8世紀〜19世紀手前の西洋音楽です。
今回演奏する曲目は、そのうちの16世紀半ば〜1740年頃までの、いわゆる後期ルネサンス、バロック音楽と呼ばれるジャンルに属します。 イギリスのエリザベス一世やフランスのルイ14世が君臨し、絶対王政のもと、絢爛豪華な宮廷文化と「舞踏の世紀」とも呼ばれるほどのダンスの文化が華開くと共に、顕微鏡や天体望遠鏡の発明など科学技術の進歩、そしてとりわけ人間の手が直接関わる絵画や彫刻技法、服飾、工芸に至るまであらゆる精緻な技法が人類史上、頂点を極めた時代でした。ちなみにピアノもそのような時代(1700年頃)に発明されました。(ただし一般普及には更に100年を要しましたが。)
当然、音楽もこうした影響を受け、メロディや、それらを一層優美にする数多くの装飾音も、 宮廷という非日常の「異空間」を覆った「高貴で荘重な雰囲気」に更なる華を添え、昇華させる役割も担ったのです。 その一方で、突出した文化を誇りながら医学の進歩は遅れ、蔓延する疫病や戦禍、死への恐怖と常に隣り合わせだったのもこの時代。生まれた音楽の一つ一つは短くも、そこには生への悦びや死への深い哀しみと諦念が隣り合わせるように美しく凝縮されています。この時代の音楽が持つ美質ではないでしょうか。コンサートでは当時を再現した服装で演奏し、時代の空気感も演出してみたいと思っています。
Q2.ピアノではなく、当時の楽器での演奏にこだわる理由は何ですか?
A2.前述しましたその千年間でピアノが登場したのは最後の百年間に過ぎず、さらに現代と同じ形になったのは20世紀入ってからの百年ほど前。1900年製のスタインウェイも立派な古楽器なのです。トレーナーを着て演じる歌舞伎役者はいませんし、マグカップでお茶を点てる人もいませんよね?それと同じ位、自然な感覚です。
Q3.今回の公演の見どころ、聴きどころを教えてください!
A3.使用するヴァージナルは17世紀、フェルメールが描いたものを忠実に復元したものです。彼が実際聴き、創作の礎としたかも?知れない音楽と、この楽器が隆盛を極めた16世紀英国から始まり、18世紀パリの音楽、そしてバッハが最も愛したとされるクラヴィコードも紹介し、時空を超えた音楽旅行をお楽しみ下さい。